産業医と主治医の役割
組織のメンタルヘルス対策をすすめるなかで大きな役割を果たす産業医と主治医。そもそも、産業医と主治医にはどのような違いがあるのでしょうか?産業医とは、「企業などにおいて労働者の健康管理等を行う医師」のことをいいます。一定規模以上の事業場には、産業医の選任が義務付けられています。
一方、主治医とは「特定の患者の医療方針全般に対して主たる責任を有する医師」のことです。メンタルヘルスに関して言えば、外部の担当医師になります。
多くの企業担当者から、『主治医は患者の立場でしか診断書を出してこないから当てにならない...』ということを漏れ聞きます。しかし、実はこれは当然のことです。 なぜなら、主治医はあくまでも患者の側からの意見を持つことが求められているからです。(産業医は患者だけでなく、組織側の立場で意見を持つことが求められている)
よくあるケースとして、従業員本人が、主治医の診断書に記載された『復職可能』・『通常勤務可能』という意見を理由に復職を強く主張することがあります。一方、組織において、勤務可能かどうか、就業制限が必要かどうかは、通常、産業医の判断が優先されるため、産業医の見解が異なるともめるというケースです。
通常、主治医と産業医の意見はほぼ一致しますが、例外的に異なることがあります。 例えば、主治医が行う復職可能の判断基準は、『休んでいる』・『薬を内服している』・『病態が安定している』という状態であり、産業医が行う復職の判断基準は、『1日8時間(または所定労働時間)勤務できる』という状態です。1日8時間というのは、復職直後に8時間ということではなく、リハビリ勤務などを経て、徐々に勤務時間を延長して、数ヵ月以内に8時間になることを目安としています。
一般的に、復職の判断において、主治医と産業医を対立軸におく傾向がありますが、主治医と産業医は決して本質的に意見が相違しているわけではなく、立場の相違が反映されるだけのことです。
主治医は治療の責任を負い、本人の希望を優先する立場です。一方、産業医は本人の病態と労働との関係、組織との関係性における状態を判断する責任を負い、本人の健康と組織の健全性を保つべく判断をします。
ですから決して、主治医と産業医は対立するものではなく、人事・労務担当者は主治医の意見を参考に、産業医の判断・意見を仰ぎ、最終的に会社として決定をくだすというスタンスが良い形だと考えられるでしょう。
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